十勝一市・一農業構想

全国の合併状況

 市町村の大統合は過去にも2度行われており、1度目は1888年から89年にかけての「明治の大合併」。市制町村制の施行に伴い約7万の集落が約15,000に統合されました。2度目は1953年から61年にかけての「昭和の大合併」で、市町村数は約3,500となりました。
 そして今、「平成の大合併」の状況は、18年4月1日全国の市町村数が2000を切り1820となりました。
 合併特例法では平成17年3月までの申請、平成18年3月まで合併した場合、財政面への優遇措置を充実させたため全国で合併協議が加速しました。
 新合併特例法が5年間の時限立法として平成17年4月から施行され、市町村の改編は新たな段階に入りました。

合計 比較
平成10年10月1日 670 1994 568 3232
平成11年4月1日 671 1990 568 3229 △3
平成16年4月1日 695 1872 533 3100 △129
平成17年4月1日 739 1317 339 2395 △705
平成18年4月1日 778 845 197 1820 △575

北海道の合併状況

 北海道においても全国的な合併の動きより遅れており、我が十勝においては幕別町と忠類村の合併が唯一という状況です。

合計 比較
平成11年4月1日 34 154 24 212
平成16年12月1日 34 151 23 208 △4
平成17年4月1日 34 150 23 207 △1
平成18年4月1日 35 130 15 180 △27

合併後の市町村数

市町村合併の必要性・メリット(一般論)

次のような観点から市町村合併は必要と言われています。

《日常生活圏の拡大》
 交通網の発達などにより日常の生活圏が拡大し、これに伴い行政も広域的に対応する必要があります。

《少子高齢化への対応》
 今後、各地域で少子高齢化が一層進展し、特に高齢者への福祉サービスはますます大きな課題となってきます。とりわけ高齢化の著しい市町村については、財政的な負担や人材確保が心配されています。

《地方分権の推進》
 地方分権によって住民に身近な行政の権限をできる限り地方自治体に移され、市町村にとっては「自己決定・自己責任」の原則に基づき地域の創意工夫による行政運営を推進することが期待されています。これを円滑に進めるために、地方自治体も行財政基盤を強化するための努力が求められています。

《多様化する住民ニーズへの対応》
 住民の価値観の多様化、技術革新の進展などにともない、住民が求めるサービスも多様化し、高度化しています。これに対応するため、専門的・高度な能力を有する職員の育成・確保が求められています。

《厳しい財政状況》
 国・地方ともに多くの長期財務を抱え危機的な財政状況にあるなかで、より効率的な行政運営が求められています。

市町村合併のメリットついて次のことが挙げられています。

《広域的な観点からの地域づくり・まちづくりができます。》
 広域的な観点からのまちづくりの展開、重点的な投資による基盤整備の推進、総合的な活力の強化、地域のイメージのアップ、環境問題、観光振興など広域的な調整が必要な施策の展開などが可能となります。

《住民サービスが高度化・多様化されます》
 住民にとってのサービスの選択の幅が広がるとともに、現在のサービス水準を確保しつつ、より高い水準のサービスを安定的に受けられるようになります。

《行財政の運営の効率化や事業の重点化が図られます。》
 行財政運営の効率化により、少ない経費でより高い水準の行政サービスが可能となるとともに、総合的な行政が展開できます。

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十勝の市町村合併~十勝一市構想 十勝一農協構想

〔1〕構想の視点

  前述したような一般的に論じられている合併の必要性、メリットについては、十勝・帯広においても当てはまることでありますが、我が十勝・帯広において合併が遅々として進まないのはなぜでしょうか。
各地で協議会が設立され協議がなされてきたところですが、幕別・忠類の合併を除いては破綻してしまいました。
  私は、暗礁に乗り上げている十勝の合併論議については、隣接している自治体がどう合併するかという論議ではなく、大局的に十勝の基幹産業である農業、生活の基盤である農業を、現在の粗生産2500億円に1000億円上積みし、3500億円農業に発展させるためにはどうすべきかという視点からの議論が必要であると考えます。

〔2〕交付税等財源の減少と行財政改革の限界

 2001年度の経済白書で、地方財政を分析した岡本直樹内閣府参事官補佐が、地方に7兆円を移譲する想定で試算したところ、北海道の税収は1,254億円増えるが、逆に交付税が1,348億円、補助金など国庫支出金が1,000億円減るなど差し引き1,570億円の歳入減となり、道内の市町村も総額1,618億円の歳入減で、いずれも減少額は各都道府県で最大です。「5兆5千億円を移譲する片山総務案で試算しても、同じような結果になるだろう」と言われておりました。

普通交付税の推移(単位:百万円 %は対前年比)

平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年
帯広市 17,406 17,522 15,488 14,513 14,242 13,460 13,569
町 村 74,195 73,698 68,935 62,547 58,647 53,473 53,671
合 計 91,601 91,220 84,423 77,060 72,889 66,933 67,241
増減額 △381 △6,797 △7,363 △4,171 △5,956 308
増減率 △0.4% △7.5% △8.7% △5.4% △8.2% 0.5%

 このように、市町村財政の柱である普通交付税が年々大幅に減額となっており、平成17年度決算においては、平成11年度から実に244億円、率にして26.6%減という非常事態が起きています。
 その間、各市町村では財政の立て直しのために行財政計画等を立て、行財政改革に取り組んでおりますが、この交付税の減少の前にはその効果にも限界があり、各種サービスの低下、管内経済の閉塞感だけが住民に重くのしかかってきているのが、十勝・帯広の現状だと思います。
 国においては、「三位一体改革」で平成16年度3兆円の交付税の削減を行い、17年度、18年度は削減に対する地方自治体の反発を考慮し削減案は出ていないが、今後の大きな課題として交付税改革が残されております。そしてそれは自治体にとって、合併未実施の市町村にとってさらに厳しさを増すことは必至であります。

〔3〕明確なビジョンを住民に示す

 このような現状をふまえ十勝・帯広の将来を考えるとき、各自治体が自助努力の中で住民福祉とサービスを維持・充実させながらこの難局を乗り切ることは不可能といっても過言ではないと考えます。
住民福祉を後退させたら自治体は存在意義を失います。
 抜本的な対策、財政規模を縮小しながら住民サービスの低下を招かないようにするには、市町村合併以外には考えられません。
市町村合併は究極の行財政改革であり、市町村が現在の行政サービスの水準を将来にわたって維持し、より一層効率的な行政運営を行うことが可能となります。
 私は、十勝管内各市町村は、住民の将来の幸せをしっかりと見据え、決断を先送りすることなく、新合併特例法の枠組みの中で真正面から合併について議論をしなければならないと思います。

 何年後に十勝の姿をどうするのかということを各市町村が明確にしない限り、行政改革は本当の意味をなしません。
 一例を挙げれば職員数のことです。
 各市町村とも退職者の補充を最低限に抑え職員の採用を計画していることと思いますが、目標をどこにおいて採用計画を立てるのでしょうか。各市町村がそれぞれの独自の考え方で進めていては、合併したとしても合併の最大のメリットである職員費の抑制という効果が発揮されず、その効果が表れるのにまた職員の退職を待たなければならないという気の遠くなるようなことになってしまいます。
 十勝は旭川市と同じ人口規模です。しかし、職員費が旭川市164億円に対し十勝管内全体で272億円と実に100億円以上の差にもなります。ここが、市町村合併が究極の行財政改革と言われる所以であります。
 明確な目標を持たないで、職員数をどのように推移させるか考えることができるでしょうか。いま各市町村が同じ目標に向かって進まなければ真の行財政改革はできないのであります。

 抽象論ではなく、明確なビジョンを打ち出すことが十勝に住む住民に対する責任だと、私は考えます。

〔4〕3,500億農業に向けた合併

 十勝の基幹産業である農業振興にとっても市町村合併は、非常に効果があります。
平成17年の十勝の農業粗生産は2,500億円でありました。
私は、十勝の基幹産業である農業を「3,500億農業」を目標とした将来に向けた展開を行わなければならないと考えています。

(1)十勝産ブランドの強化
農業産出額推計値の内訳

 『日本の食料基地』と呼ばれる十勝の生産・加工物に対する消費者の期待は質・量ともに大きく、基幹産業である農畜産物に支えられ発展した十勝は、今以上に安心・安全な食料を消費地に提供していかなくてはなりません。
 最近テレビのグルメ番組でも「十勝産の○○」とよく耳にするようになりました。全国の消費者に十勝産農畜産物の品質の高さが認識されている証拠だと思います。
 このような中で将来に向けた十勝産ブランドのさらなる強化戦略を展開しなければなりません。
 一例を紹介いたしますと、川西産の長いもは、他の農協産と比べれば、3割から5割も高くブランドとして確立しております。大正のメークインや豊頃の大根など数多くの地域ブランドがしのぎを削り、争っているのが、現状であります。これがもし十勝が一つになれば、十勝産ブランドとして、一体となった宣伝活動ができ、更に十勝産ブランドの向上につながります。
 また、通称、はね品といわれている野菜の規格外農産物の2次加工は、単一の市町村では数量の安定供給が不可能なため難しかったものが、合併により広域から原材料の調達が可能となり、2次産業、3次産業が創出されます。
 さらに、BSEの発生や表示偽装問題などの発生により、消費者の食品に対する安全・安心への意識も高まり、提供する生産者、製造者、販売者にもこれまで以上の信頼が求められています。特に『日本の食料基地』と呼ばれる十勝の生産・加工物に対する消費者の期待は質・量ともに大きく、基幹産業である農畜産物に支えられ発展した十勝は、今以上に安心・安全な食料を消費地に提供していかなくてはなりません。
 安心・安全な食料の供給のために、今後、マニュアル化しなければならないものに、十勝産農産物の生産記録や加工・流通情報を消費者に対して、開示する必要があると思われます。
 私はこれら、作付け履歴の発信元として、とりあえず農業技術センターへのサーバー設置か、他機関への委託制度を提案したいと思います。
 また、残留農薬の検査は、十勝産ブランドにとって必要不可欠なものであり、消費者に対し十勝農畜産物の安全性を示す唯一の方法ではないでしょうか。
 消費者に安全性を認めてもらうことによって、一割なり二割なり高くても買ってもらえるわけですし、安全性が確認されれば、現在規格外となっている農産物の販売も可能となり、現在の十勝農業粗生産額は、400億か500億円も増えることが推計されます。
 十勝全市町村の地方交付税額の減額分を十分にカバーできるわけです。
 十勝の各市町村がひとつになり、そして各農協がひとつにまとまって、明確な戦略を構築することが将来に向けた十勝農業の発展を揺るぎないものとし、真に日本の食糧基地となると思います。

(2)肉牛の振興と海外への視線

 十勝農業がさらなる発展を遂げるためには、今後海外への輸出を視野に入れた戦略を構築しなければなりません。海外-それは中国を視野に入れた戦略です。
 05年の貿易黒字は史上最高の700億ドルに達する見込みであり、中国経済は近年めざましい成長を遂げております。13億人ともいわれる国民が豊かになってくると何が起きるでしょうか。
 私は、ここに十勝農業が飛躍的に成長するポイントがあると思っています。
 我が国の歴史を振り返ってみても、経済が成長し国民生活が豊かになってきたとき、多くの人が牛肉を食べるようになりました。
同じことが中国でもおきます。そして中国人の食味は日本人と同じであるといわれています。いわゆるサシの入った牛肉が好まれるはずです。
 このことを十勝農業のビジネスチャンスとしなければなりません。
 そのための戦略を行政、経済団体、関係機関が十勝一丸となって取り組む必要があると考えます。

(3)関連する産業への波及効果

  現在、十勝管内で最も深刻な影響を受けているのが、古くから地元で商売を行っていた商店と、土木建設業であります。大資本にものを言わせて地元に入ってきた大規模店に、どれだけの地元商店が潰れたことでしょうか。その影響は帯広にとどまらず、十勝管内の他町村にも、客の流失による多大な影響を与えております。抜本的な対策が必要であります。
 例えば、十勝全体を考え、地元商店を守るとするならば、大店法規制条例は大変に有効であります。
 十勝管内全体で考える必要があり、帯広だけでは効果がありません。十勝が一つになって、初めて有効になります。
 土木・建設業にも同じことが言えます。景気のいいときには、国の予算が付いたため、どんどん建設が行われ、その結果、たいして利用しない施設の維持管理費に多額の財政負担が生じている自治体もあります。
 しかし、これからは、十勝全体で考えた街づくりや道路整備が必要であります。近隣の市町村で公共施設を共有しあい、維持管理費の削減に努めなければなりません。また、十勝全体で協力しあえば、十勝港の更なる利用法や池田、北見間の銀河線の存続なども可能ではなかったでしょうか。

 3500億農業の実現に十勝一市構想が実現すれば、新たな産業が創出されます。また基盤整備の必要性が出てまいります。その中で、十勝として働く場の確保が可能になると考えます。

 そして「十勝でできることは十勝で」ということが本当の意味で可能になると思います。今はこの発想をそれぞれの自治体等がもっていたとしても、それぞれの事情の中でなかなか実現できていなかったのが実情であります。
 これが十勝一市になれば、真に「十勝でできることは十勝で」という発想が、トータルで実現可能となると考えます。
 どうしても十勝ではできないこと、これとて十勝にお金を残す方策が十勝一市であれば可能となります。
 たとえば、十勝全体で大型農業機械がどれだけの金額が導入されているでしょう。莫大な金額となるはずです。メーカーにとって十勝はドル箱です。その本社がすべて本州府県にあるためにそのお金は十勝には全くといっていいほど残りません。十勝に本社を持ってくる企業からしか買わない。乱暴かもしれませんが一市・一農協であればこのくらいのことはできるのではないでしょうか。

 市町村合併の難しさはよく理解しています。
 しかし、この難局を確かな決断で乗り切ることができるかできないか、私たちの十勝・帯広の将来がかかっています。

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